去る5月に、「スイス社会経済史学会」の年次大会(5月21日、ベルン大学)に参加してきましたので、簡単に内容をご報告します。
今年の大会のテーマは、「『第三セクター』の拡大と変容(Expansion und Transformation des "dritten Sektors"(15.-20. Jahrhundert)」でした。
事前には、第三セクターという現代的なテーマが果たして歴史研究のテーマになり得るのか、ましてや十五世紀といった中世後期についても第三セクターという概念で把握できるような事態が存在したのであろうか、という思いを抱きながら参加しました。
Alberto Carreras (Barcelona大学)による基調報告に続き、昼食と会員総会を間に挟んで、次に挙げる三つのセッションに分かれ、各々8本の報告と質疑応答がなされました。
T. 成長、生産および消費に対するサービス業の関与
U. 公的サービス業の成立と変容
V. サービス業としての知識の創出と情報の拡散
私はTのセッションに参加しました。報告者と報告のタイトルは以下の通りです。
@Ulrich Woitek und Dirk Drechse「国民経済総計算においてサービス業はどのように見落とされるか、どのように把握されるのか?」
AC?dric Humair
「産業のサービスの受給者のような連邦国家−国際経済競争に向き合う」
BBarbara Keller「十九世紀の都市成長における食料品取引の役割」
C Peter Moser「消費者の関心における生産者としてのサービス業者。
第一次世界大戦後の食品生産の問題」
DMartin Schrade「ミグロにおけるサービス業と生産の統合(1925年〜1992年)」
EKatja Girschik
「スキャニングとバーコード−生産、流通および消費の間のサービス業−」
FElisabeth Joris「アルプスの貫通:トンネル建設、サービス業および性」
GNatalie B?sser「傭兵徴募、貨幣送金および情報交換のための窓口としての『女主人』。 1700年頃の家族経営の傭兵業における、ツークのZurlauben家の女性構成員の職務」
全体として、サービス業という観点を導入することにより歴史に対する見方が深くなることを強く印象づけられた。とくに興味深かったものを挙げると、Bは十九世紀の都市バーゼルの拡大に伴う、都市生活者向けの食料品取引の整備と発展を扱っており、Fはトンネル建設という一時的な事業のために、人工空間としての定住地が作られ、作業に従事する労働者とその家族のためのさまざまな施設が建設され、維持されたことを扱っており、Gは傭兵業がさまざまな社会的な役割を果たしていたことを扱っていた。