第2回  研究報告会 報告要旨

「スイスにおける歴史研究(Geschichtsforschung in der Schweiz)」所収の、中世教会史のサーヴェイ論文について

報告者 踊共二


▽日時:1993年6月26日(土)15時〜17時30分
▽場所:日本女子大学 文学部史学科演習室


E・トレンプ、K・U・トレンプ、カール・プファフ、過去四半世紀の中世教会史研究
E.u.K.U., Tremp und C.Pfaff, Zwischen Institutionen und Froemmigkeit:
Die Erforschung der Mittelalterlichen Kirchengeschichte.

 1964年以降に出たスイス中世教会史の文献(ドイツ語圏中心)に関する紹介論文。まずスイス全域にかかわる総合的な史料集・研究書が紹介され、つづいて教皇、公会議、司教、聖人(伝)、修道院、聖堂参事会、祈祷兄弟盟約 Gebetsverbruederung、死者名簿 Totengedenkbuch、信徒団体、教区制度、中世後期の民衆の信心といった個別的領域の主要な史料集・研究書がとりあげられている。
 
総合的な史料集として、Helvetia Sacra がとくに詳細に紹介されている。1964年に刊行が始まったこのシリーズは、著者によれば、これまでの研究の集大成・スイス教会史のハンドブック・不可欠の情報源・百科事典としての役割をになっていると評価されている。しかし同時に、その編集方針の難点(制度優先・高位聖職者偏重・男性中心)も指摘されている。

 個別の領域としてとりあげられている項目は多岐にわたるが、詳述されているのは、著者の推賞する「古い教会史の枠組みを超えた学際的研究」が行われている領域である。たとえば、中世盛期・後期の小教区に関する研究がそうである。教会寄進者・教区主任司祭・助任司祭・教区民の関係をめぐる研究(とくに助任司祭の選出に関する新しい研究)や、教区内の宗教生活(礼拝や説教、秘跡の受領、祭壇の寄進、兄弟団、四旬節の断食、贖罪制度、聖遺物崇拝、中世後期の教会建設ブームなどのテーマをめぐる新しい研究)が数多くとりあげられている。また、ベギン会やフランシスコ会第三会といった信徒団体と都市社会をめぐる研究も、中世の教会と社会における女性の地位について考える材料として、積極的にとりあげられている。

 この論文は共作のため、研究領域の分類や注記に重複が多い。また、研究書の内容に関するコメントが充分でない場合が多く、研究動向は概して把握しにくい。もっとも、文献目録としては非常に役に立つ。