第4回  研究報告会 報告要旨

宗教改革史のサーヴェイ論文について
ヘルムート・マイヤー、16,17世紀における宗教改革とその影響
Helmut Meier, Die Reformation und ihre Wirkungen im 16. und 17. Jahrhunder
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報告者名 米原 小百合


▽日時:1993年11月6日(土)15時15分〜18時15分
▽場所:日本女子大学 文学部史学科演習室


 1950年代の宗教改革史研究はすなわちツヴィングリ研究であった。マイヤーも紙面の多くをツヴィングリについて割いている。1887年に「ツヴィングリ協会」が設立され、雑誌『ツヴィングリアーナ』とともに研究の土台となっている。『ツヴィングリ全集』校訂版は「ツヴィングリ協会」の設立とほぼ同時に着手されたが、新約聖書講解、使用文献の余白書込みと説教筆記を残している。50年代の研究は多分に無批判で英雄視もみられたが、その後社会、精神的背景が重視され、個人中心の記述は回避されるようになった。
 「ツヴィングリ協会」の中心フォン・ムーラルトの死後チューリヒでのツヴィングリ研究には進展がみられないが、外国での研究が盛んになると同時に、スイスでは宗教改革とツヴィングリを同一視できないことが認識される。都市と宗教改革の関係についてのイギリスの研究者やメラーの研究が多くの地域研究を生み出した一方、ブリックレは宗教改革を共同体的出来事ととらえ、農村と宗教改革の関係に着目した。また、宗教改革をめぐる文化、精神的変化や、ルター、ツヴィングリ以外の“小改革者たち”も研究され始めている。人文主義の宗教改革への影響は軽視されがちであったが、宗教改革と人文主義の関係をめぐる研究はことにバーゼルにとって重要であり、エラスムス没互450年に頂点を迎えた。
 ツヴィングリの後継者ブリンガーの『ブリンガー全集』の校訂版は、まだ多くの作業を残している。カルヴィン研究については概観不可能であるが文献目録は充実している。研究の中心が“大改革者”から社会、政治的な状況や後継者に移行している点はフランス語圏においても同じである。
 17世紀と経済、社会、人口史については簡単にしか述べられていない。17世紀は宗教改革と啓蒙主義の間でどちらからも触れられず、史料も少ないが、強国との関係や政治的エリート、軍組織、ユグノー派などが研究対象としてあげられている。経済、社会、人口史では初期工業化の時期と原因、貨幣、金融史、経済史の地域研究、教育史などの文献が紹介されている。
 マイアーは、社会経済史と教会史の二つの分野から研究されていることを、宗教改革史研究の問題点とし、民間信心や教会の社会的機能と構造などを統合的テーマとして指摘している。また、歴史叙述が、改革者中心から、その社会的前提や、影響に重きをおくようになったことを評価して結びとしている。