第5回  研究報告会 報告要旨

環境史と人口史についてのサーヴェイ論文について

報告者 岩井 隆夫


▽日時:1994年2月12日(土)15時30分〜18時15分
▽場所:日本女子大学 文学部史学科演習室


@Ch.フィスタア、A.シューラア:
歴史における環境についての研究
-自然科学と社会科学にとっての、新たな橋渡しの課題-
Historische Umweltforschung
-Eine neue, faecherverbindende Aufgabe fuer Natur- und Sozialwissenschaften

1.認識関心と諸視角
 この十年間における環境問題に対する認識関心の増大は、歴史叙述における環境という
問題を提起した。
 環境に対する既存の立場は、a)技術信仰の楽観的な見方、及びb)諦念的な、文化悲観的
な見方という、対照的な二つの見方から成ってきた。
 環境史については、アメリカ合衆国とフランスでの先駆的な試みに続いて、1980年
代中頃からドイツでも学問上のテーマとされ、スイスでも「スイス社会経済史学会」は1
987年の年次大会のテーマを「環境の歴史」とした。
 環境史についてのアプローチは、大別すると1)システム論、2)汚染、3)自然の社会的表
現としての環境の三つから成り、相互補完的であるべきである。そして、その際には、自
然システムについての専門的な知識を提供する自然科学と過去における社会システムの特
製をめぐる文書館の史料と知識を提供する歴史学の実りある対話が望まれる。
 以上のような前置きに続いて、スイスにおける環境史の研究状況を概観されている。
2.気候変動と自然災害
 まず取り上げるのが、固有の気候の歴史である。フィスタア自身、一五二五年から一八
六三年の期間について、短期と長期のレベルを関連させることによって、スイスの気候の
歴史を再構成する方法を開発し、データバンクを構築しつつある。この方法は国際的にも
普及しつつある。その他、気象や自然災害に関する個別研究が蓄積されつつある。
l口動態と似通っているけれども、14世紀後半から15世紀にかけて周辺農村や小都
市からの移入人口の増大もあって都市人口は増大していること、また特に16世紀以降、
都市化の比率には地域的差異があること、及びチューリヒやバーゼルやザンクト・ガレン
などの指導的都市の人口は微増であることが注目される。
  5. 人口構造
 特に都市部での女性(独身女性や寡婦)の占める比率が高いこと、世帯規模は経済上・
制度上・社会上の要因によって影響を受けることが指摘されている。

3.人口学上の振る舞い
  1. 結婚と再婚
 出生率や死亡率とは異なり、結婚と再婚は社会的な行為であることが指摘されている。
  2. 出生率と死亡率
 経済・社会・文化的な事情や地域による差異、及びプロテスタントの都市社会における
出産制限が指摘されている。

(文責:岩井)